ミャンマーへの投資環境 (日ミャンマー投資協定)

ミャンマーへの投資環境 (日ミャンマー投資協定)

2014年8月、日本とミャンマーとの間の投資を推進するための日緬投資協定が発効しました。日緬投資協定の締結・発効によって少しずつではありますが、日本からの進出・投資環境は整備されつつあると言えます。投資協定の内容は、過去、日本が他のASEAN諸国と締結してきた投資協定と比較しても、より自由かつ広範な規範を定める内容となっています。事後的な投資資産保護型の投資協定ではなく、投資を行う前段階における規範を広範に定めており、投資自由化型の投資協定となっているのが特徴です。投資家の予見可能性を確保する上で極めて優れた投資協定となっていると言えます。

まず、主要な規範として、「内国民待遇」「最恵国待遇」および「公正衡平待遇」を規定しています。「内国民待遇」は、ミャンマー企業に与えている待遇よりも不利でない待遇を日本の投資家に与えることであり、「最恵国待遇」は、第三国の投資に与えている待遇よりも不利でない待遇を日本の投資家に与えることです。これは損害賠償についても妥当する原則です。「公正衡平待遇」は、投資財産に対する善管注意義務、適正手続義務、司法拒否禁止、恣意的措置禁止、合理的期待形成履践義務などを規定するものです。

そして、収用禁止原則と適正補償の原則が規定されています。収用については、収用のための要件を規定し(公共目的、正当な手続き、非差別的手段、市場価格による補償)、仮に所有権への直接的な制限でなくとも、その他の行政裁量権に基づく制限についても「収用」概念に解釈吸収することで、投資家の財産保護を図っています。

さらに、同協定では、アンブレラ条項が入りました。ミャンマー政府と日本企業のプロジェクトにおける契約遵守義務と、いわゆるISDN条項が入ったため、投資協定違反については、国際仲裁の活用への道が開かれました。これにより、紛争が発生した場合は、ミャンマー国内の司法判断によるのではなく、国際仲裁機関に紛争を付託して、仲裁裁判所が裁定を下すという形の紛争解決の枠組みになります。このISDN条項については、カナダなどの紛争事例をあげて、国家主権の侵害だ、などという批判もありますが、現状の国際的な紛争解決手段としての流れに沿うものであり、ISDN条項が入ったこと自体は評価されるべきものと思われます。

また「パフォーマンス要求禁止条項」も規定されています。ミャンマーは、日本からの投資に対して、投資活動の条件として、特定のパフォーマンス要求をすることを禁止しています。主要な禁止パフォーマンスとしては、原材料の現地調達義務、現地物品サービスの使用義務、一定の輸出入義務(量、輸出制限など)、技術移転義務、役員の特定国の国籍要件を課すこと、などが規定されています。

そして、実務的に重要なのが、「資金移転の自由」を規定したことです。ミャンマー宛への資金の送金(投資金、給与等)や、ミャンマー国内で稼得した収益を、自由かつ遅延なく資金移転ができるようにする義務をミャンマー政府は負います。

最後に、本協定に関連するミャンマー国内法令他行政手続きについて、ミャンマー政府は迅速な公表義務を負います。

以上、日本ミャンマー投資協定が締結されたことで、ルールが明確になり、投資家にとっては、かなりの範囲で投資に対する予見可能性が確保できるようになりました。同時に、国際仲裁などの紛争解決手段の利用の道が開かれたことで紛争の実効的解決が期待できるようになりました。また、本協定の締結により設立されることになる「投資委員会」などにおいても事前の予防的紛争解決の場が設けられます。

本協定と並行して、「日ミャンマー共同イニシアティブ」において、更に詳細な実務的な課題提言がなされており、今後そこで問題提起されている実務的な課題を一つ一つクリアにしていくことが、今後期待されています。

最新関連記事 一覧はこちら