台湾 TOPIC(1) 2016年総選挙結果

台湾 TOPIC(1) 2016年総選挙結果

2016年1月、注目の台湾の総選挙(総統選挙、立法院選挙)が行われた。

台湾と中国との関係、東アジア情勢へも大きな影響を与える重要な選挙となった。

 

(選挙結果)

結果は、大方の予想の範囲を超え、民進党が圧勝。立法院の定数113の内、68議席を確保し(40→68)大躍進。一方の馬英九率いる現与党の国民党は議席を半減させ惨敗した(64→35)。1982年の立法院設立以来、国民党は初めて、立法院の議長ポストを民進党に明け渡す結果となった。

一昨年のひまわり運動(立法院占拠)以降、台湾独立志向の強い少数政党が比例区で乱立したのも今回の選挙の特徴となった。ひまわり運動で注目を浴びたリーダーが昨年結成した新党である時代力量は5議席を確保。その他、親民党や無所属も議席を獲得した。

総統選では、民進党の躍進の原動力となった蔡英文氏が見事リベンジを果たし圧勝した。

 

(政権交代へ)

この選挙結果を受け、台湾では8年ぶりの政権交代が実現することになる。加えて、台湾初の女性総統の誕生である。

国民党の馬英九総統が進めてきた大陸との融和政策に対して、民意がノーを付きつけた結果が今回の総選挙と評価されよう。もっとも、台湾経済にとっては国民党が進めてきた対中融和政策において、数多くの経済的恩恵を享受したことは間違いない。ただ、恩恵が特定産業に偏りがあり広く国民の生活レベルの向上を実感させるまでには至らなかった。物価が高騰し格差が拡大した。

さらに大きな背景として、香港同様、台湾においても、公民ナショナリズムが確実に定着しつつあると言えよう。香港の雨傘運動、台湾のひまわり運動に共通するのは、大陸の民族的なナショナリズムに対する民主主義を手段とした公民権運動の側面だ。香港も台湾もその歴史の中で、着実に真の民主主義が根付いてきている。それは民主と自由を基本概念とする西洋的な近代国家が有する価値観であり、この価値観は、中華文明が志向する統治思想とは大きく異なるものだ。台湾人は、台湾のことは台湾人が自ら決める自由を求めたのである。蔡英文氏は勝利宣言の中で、今回の選挙で最も意義のあったのは主権者が民主主義の精神を示したことであり、台湾の民意は台湾の主権を守る政府を求めたことだと述べた。まさに、蔡氏が述べた通りの意義が今回の歴史的な総選挙の結果と言える。

 

(近隣国との関係)

今回の総選挙においてはこれまで中国は静観を貫いている。民進党は、国民党と中国共産党による1992年コンセンサス「一つの中国原則」を認めていない。蔡英文氏は、中国を友好国として意思疎通を図っていくと言っているが、その距離感が微妙に変化することは間違いないだろう。その距離感の取り方次第で、東アジア地域のパワーバランスに大きな影響が出ることから、日本としても、引き続き今後の台湾情勢から目が離せない。民進党政権が議会での単独過半数という強固な政権基盤を背景に、過度な台湾独立路線へ舵を切り、対中関係を悪化させることは、東アジア情勢への影響が大きい。対中関係は、平和で安全な両岸のために現状維持方針というのが、蔡英文氏の選挙時の発言だったが、その政権運営を注視しなければならない。

馬英九政権下において、日本との関係は、東日本エリアの一部日本製品への不当な輸入規制の実施など、ちぐはぐな政策運営で混乱を生じさせたりもした。また尖閣諸島の領有権の主張や慰安婦問題での賠償問題の提起など、日台関係悪化の火種を馬政権は有していた。 1972年の日中国交正常化以来、台湾との国交断絶下においても、人的にも経済的にも交流を深めてきた日台関係。新しい民進党政権においては日本との関係が良好な状態に戻ることが期待される。

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