外国投資規制の法律上の枠組み
ミャンマーにおいては、明文規定上は、外国資本100%での投資が可能です(外国投資法9条)。その上で、国営企業法上の独占12業種については、外国資本および民間独資での投資はできない為、ミャンマー政府との合弁事業として投資が認められるという枠組みとなっています(直接的な外資規制ではありません)。
(国営企業法上の国家独占12業種)
- 国内外におけるチーク材の伐採及び販売
- 森林の植林及び保全(村民が個人消費用に植林した村所有の薪の採取を除く)
- 石油、天然ガスの採鉱、採掘、販売、製品生産
- 真珠、ヒスイ、その他高価な宝石の探索、採取、輸出
- 政府調査により留保されている魚類、エビの養殖と生産
- 郵便、通信事業
- 航空、鉄道事業
- 銀行、保険事業
- 放送、テレビ事業
- 金属の探索、採掘
- 発電事業(民間及び共同発電事業を除く)
- 安全保障と防衛に関連する製品の生産(適宜政府が通知)
その上で、外国投資法は、外国投資を推奨するための基本原則として、以下の通り規定しています(外国投資法 第三章)。
外国投資は以下の基本原則に適合するようになされなければならない。
- 輸出の促進および拡大
- 大型投資を必要とする天然資源の開発
- 先端技術の獲得
- 大規模な資本を伴う生産とサービスのサポートおよび支援
- より多くの雇用機会を創出すること
- エネルギー消費を節約するための施設の開発
- 地域開発
この基本原則に準拠する形での外国投資が認められることになりますが、外国投資法は、同法が規定する外国投資に該当する投資についてのみ適用となり、それに該当しない投資(例えば、会社法上の外国投資やSEZ法に基づく外国投資)については、それぞれ会社法やSEZ法のみの適用となることに留意する必要があります。ここは法律の枠組みとして、特に分かりにくい部分であるとの指摘がなされていますが、概ね、工場設備等の大型資本投下を伴う投資は外国投資法が適用となり、サービス産業などで大型の資本投下を伴わない投資は会社法が適用となります。ティラワ経済特区など、特定の経済特区へ投資する場合は、当該特定のSEZ法が適用となり、外国投資法は適用外となります。
改正前の外国投資法においては、最低投資額規制が明文でなされており、「製造業50万米ドル、サービス業30万米ドル」と規定されていましたが、改正法では明文規定がなくなり、施行規則やMIC通達で業種ごとに個別に規定されたり、行政運用に委ねられることになりました。もっとも旧法の最低投資額規制の投資金額の目安として運用されていると言われています。この金額規模から見ても、外国投資法上の投資は、大企業向けの投資形態と言えます。他方、外国投資法によらない規模の投資については、会社法の適用となります。投資額の目安としては、製造業の場合が100万チャット相当の外貨額、サービス業の場合は30万チャット相当の外貨額というところが運用ベースの目安となっています(*換算レートは現在1ドル=5.8チャットで運用されています。現地ヒヤリングベース)。会社法上の投資は、中小企業向けの投資形態と言えます。
外国投資法上、外国資本100%の投資は明文上可能であるが、ミャンマー内国資本との合弁形態での投資については、次の通りの出資規制が大枠として定められています。
合弁による外国人の出資比率については、
a. 当事者間の合意に基づき設定
b. MIC(ミャンマー投資委員会)が設定・承認、業種ごとに個別に規定(MIC通達などによる)
c. 施行規則によって設定(投資禁止・制限分野における合弁事業)、外国人による出資上限を80%と規定