日ミャンマー租税条約締結の狙いと、シンガポール・ミャンマー二国間租税条約の優位性

日ミャンマー租税条約締結の狙いと、シンガポール・ミャンマー二国間租税条約の優位性

租税条約締結の狙いを理解するには、事例で理解するのが分かりやすいです。もちろん、二重課税の防止などの大義が前提としてありますが、それ以外の経済性条件において他国の租税条約との比較分析が必要不可欠となります。

例えば、日本の親会社からミャンマーの100%子会社への貸付金の利息の支払いを行う場合、その利息に対して、ミャンマーでは現状15%の源泉税がかかります。同様の場合で、二国間租税条約を締結しているタイの親会社に対しては10%、シンガポールの親会社に対しては8%(10%)との軽減措置が条約でそれぞれ合意されています。

株式や不動産などの売却によるキャピタルゲインが発生した場合、日本法人に対しては40%のキャピタルゲイン課税がなされますが、租税条約の中で、キャピタルゲイン課税について、シンガポール企業はミャンマー内国法人と同じ取扱いが合意されているため、10%の課税のみです。

また、日本の親会社に対するミャンマーの100%子会社からの配当の支払いを行う場合、現状、ミャンマーでは非課税になっています。しかし、このような配当に対する非課税の状態はいつまでも続くはずはありません。課税権は国家(ミャンマー)に帰属しますが、今後外国からの資本投資が活発化し配当による支払も急増することが見込まれています。そのような中、ミャンマー政府は、将来配当に対する源泉税課税してくることが容易に予想されます。

仮に、将来、ミャンマー政府が、国際標準並みの20%程度の配当源泉課税を課してきた時には、日本企業の事業収支計画に大きなマイナスの影響を及ぼすこととなります。このような状態を回避するためにも、二国間租税条約の締結が期待されているのです。つまり、二国間租税条約を締結して、将来のミャンマー政府の配当に対する源泉税課税に対してキャップをかけるというのが実務的な意義と狙いです。

ここで、シンガポールとミャンマーの二国間租税条約を見てみましょう。両国の二国間租税条約では、将来、ミャンマー政府が配当に対する源泉税課税をした場合、5%を上限(持分25%以上の法人からの配当の場合、それ以外の持分の場合は10%を上限)に、税率にキャップ(上限)をかけているのです。つまり、将来、ミャンマー政府が、配当に対する源泉税課税に旨味があることに気づき、20%の課税を行ったとしても、シンガポールに対する配当に対しては、上限が5%とキャップがかかっているのです。このような二国間租税条約の実務的な締結内容は、企業活動において予測可能性を確保し、投資を促進する機能を有します。この点で、シンガポール・ミャンマーの二国間租税条約は実務的に優れていると評価できます。

ミャンマーは、シンガポール以外にも、英国、タイ、ベトナム、マレーシアなどとも二国間租税条約を締結しています。しかし、これらの国との二国間租税条約においては、将来の配当に対する源泉税課税に対するキャップが締結されていないのです。この点において、シンガポール・ミャンマーの二国間租税条約の優位性が顕著であり、ミャンマーへの資本投資のほとんどが、シンガポール経由でなされる合理的な理由となっているのです。

したがって、日本もミャンマーとの二国間租税条約を締結するのは、二重課税防止などの目的が第一義ではありますが、その経済性条件の内容として、将来の配当に対する源泉税に対して、キャップをかける内容の租税条約としなければ、条約としての比較優位性を欠くこととなり、シンガポール経由での資本投資の流れを変えることはできないでしょう。

日本・ミャンマー二国間租税条約を締結する場合の一番の要諦は、将来の配当に対する源泉税に対するキャップをあらかじめ定め合意することです。

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